浮世絵世界のケモノ・妖怪・異形たち
東京・原宿にある浮世絵専門の美術館、太田記念美術館。
表題の美術展が行われていることを7月の終わりに知り、連れ合いを誘って8月に行ってきた。
浮き世の「萌え」:かわいい動物たち
展覧会の構成が大変良くて、最初に「アニマルいろいろ」と題し、江戸から明治初頭にかけての浮世絵の中に、はっきりと動物を題材として紹介したものが並べられていた。
僕たちが行ったのは展示会終盤のもので、最初とは入れ替わっていたようだ。
- 「狆」(イヌ)が服を着せられ、座布団の上で優雅に琴を聞いている、歌川国芳「御奥の弾初」。
- 夜空の一部を白く描き残すことでウサギを表現した歌川広重「月に兎」
- 猪肉料理店の前で観念したかのような顔で立つ可哀想な(?)猪を描いた「当時流好諸喰商人尽」(作者不詳)
- 魚市場から運ばれる鮫と、着飾った女性がすれ違う朝の日本橋を描いた歌川国貞「時世姿五十三対 日本橋の朝景色」
- そして、ゾウやインコなど、舶来の動物たち
思っていた以上にたくさんの動物が浮世絵の素材として扱われていた。
その中でも特に愛玩されていたのが「猫」。猫についてはワンコーナーを割いて紹介されており、多くの「猫と女性」の絵があった。服の中に入り込んだり、抱きしめられてずっと、おそらく「かわいいねえ」と話しかけられていたり。
目の前にいる動物たちに対して、かわいい、美しい、と思うのは、やはり今昔変わらないものなのだろう。
モンスター
様子がちょっと変わってくるのは、「かわいい猫 怖い猫」と題した猫のコーナーの後半、猫又が登場するあたりからだ。化け猫を描いた国芳「五十三駅 岡崎」に続き、「怖いモンスター」と題したコーナーに入ると、まずは「丹波国山中は数千間越し 蜘蛛あまたの人なやますと聞 源頼光四天王お召しつれ遂にたいししたまふ図」という歌川芳艶の絵がドンと入ってくる。
絵の内容はタイトルそのままなのでいいとして(ラノベか?)、この絵に描かれた巨大な蜘蛛がまあ禍々しいというか気持ち悪いというか。デフォルメによってその恐ろしさが引き立っているように思えた。
獣人?みたいな動物たち
「鳥獣戯画」の昔から、日本の絵描きたちは動物を擬人化して「動物の頭を持ち二足歩行をする生き物」を書き続けているが、浮世絵にはこれがたくさんある。お習字の練習をする猫たち、また、善悪2パターンの道徳を説く漫画に採用された猫たち、踊りの練習をしたり、吹き矢をしたり、そば屋で店員になったりお客になったり。殊こういうのには猫が多く用いられてきたようです。
個人的に見てて楽しかったひとつは、歌川芳藤「兎の相撲」かな。まわしを付けて、いい感じに鍛えた兎たちが土俵の回りを囲み、土俵上の取り組みを見守る光景。ひとりひとりの個性は、ほんとうはじっくり見たい感じもあった。
もうひとつ。歌川貞秀「蛸踊り」。蛸のように踊るのではなく、まさに蛸が踊っているのだけど、8本の腕を持つ蛸を、四肢を持つ人間にうまく置き換えて絵に表現する、という発想に唸ってしまった。
想像上の動物
今も昔も、絵を描く人たちの創造性には舌を巻く。歌川芳虎は「家内安全を守る」として十二支を全部合体させたキメラ生物を産みだしているし、魚の体に人の胴体がついてたり、果ては道具から胴体と手足が生えて話し合ったり、手足を持った薬と病気が合戦を開いていたり……なんだこれは?
でもおそらく、この絵を見た人たちも「こりゃあおもしれぇ」と、笑っていたのでしょうねえ。
今に至る想像の翼が、日本には前からあったのだねえ、と楽しくなってしまったのでした。























