天翔橋北斗の旅々失礼します

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群馬ローカル私鉄めぐり・上信電鉄、上毛電鉄

群馬のローカル私鉄

群馬県の鉄道は、県都・前橋や最大都市の高崎を含む広いエリアをJR東日本が、群馬県という「鶴」の「首」の部分(「東毛」と呼ぶそうだが)を東武鉄道がカバーし、2つの軸となっている。これらの路線には都内から特急列車が走り、東京と群馬を結ぶ大切な幹線だ。(下の地図は、ピンクが新幹線・グレーが在来線のJR、濃い青が東武鉄道、その他の色がローカル3社。地図作成:白地図 KenMap (白地図作成ソフト)

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そんな路線網のすき間に、ローカル私鉄の上信電鉄上毛電鉄(以下「上電」)、そしてわたらせ渓谷鉄道(以下「わたらせ」)がある。わたらせは元々国鉄路線だったけれど、上信は明治時代から、上毛は昭和の初めから、ずっと地元の足として走りつづけている。

友人から18きっぷの残りの1日分を譲り受けたので、出かけてみることにした。

上信電鉄:高崎~上州富岡

何年も前に、上信電鉄を訪ねたことがある。この時は春で、途中甘楽町の中心地小幡まで乗合タクシーで向かい、館の跡や武者行列を見たり、下仁田町まで行ってこんにゃく製品を買い込んで帰ってきたりした。

この時はまだ富岡製糸場世界遺産には登録されていなかったが、近々なるのでは…という期待と、天気の良さもあってかなりの見学者が訪れていた。

今回は単純にちょっと寄ってみるだけ…のつもりが、その変化に驚いた。

f:id:kk_solanet:20160107101106j:plainまず上州富岡の駅舎だ。製糸場の世界遺産登録に合わせて整備され、待合室も充実。観光ガイドの方の居場所なども作られていて、なんと無料でWi-Fiも使える。駅のホームは昔のままだったけど、大きい割にがらんとしていた薄暗い駅は、広々とした明るい空間に変わっていた。

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折返しの電車を待っていると、先に後続の下仁田行きがやってきた。県のゆるキャラ「ぐんまちゃん」を全体にあしらった電車。早い時期から車体広告を取り入れていた上信電鉄は、電車も編成ごとにいろいろあるので、見ていて楽しい。

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そうそう、こんなのもいた。デザイン的に東武を彷彿とさせるこの電車は、どうやら工事用として活用されているようだ。

今回はこの後の予定も考えていたので、富岡で折返し、高崎から両毛線経由で前橋へと向かった。

上毛電鉄中央前橋~西桐生

前橋は県都でありながら、鉄道的には幹線から外れてしまった「支線の町」。でも、そんな町にも足となるローカル私鉄がある。

上毛電鉄は、JR前橋駅から1kmほど離れた、中央前橋駅に発着する。

f:id:kk_solanet:20160107115713j:plainJR前橋駅中央前橋駅との間には、地元のバス会社「日本中央バス」によるシャトルバスが運行されている。真っ赤な塗色と昔の電車のような明かり取りの窓が印象的な車体、そして中も木製と、きっと乗りもの好きでなくても心を惹かれるかわいらしいバスだった。

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中央前橋駅は、堂々としたガラス張りの外観がいかにも「大都会のターミナル」っぽい感じだが、発着する電車は2両編成。東京の京王井の頭線の中古が反対側の西桐生との間を往復している。

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上電(一応「上毛線」という路線名もついている)は前橋と桐生を結ぶ路線ということができる。この区間にはJR両毛線も走っているが、両毛線が途中伊勢崎を経由し「3都市を結ぶ」感じがあるのに対し、上電はそうではない感じがする。通るのはひたすら農村地帯。田んぼと田んぼの間にある、家が密集した「集落」ごとに駅があるという印象だ。ただ、高崎・桐生の両市中心部に近いエリアでは割と細かく駅が設けられていて、地元の方の足として使いやすくはなっているようだ。

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自動車社会である群馬県で、鉄道を走らせていくのは厳しいようで、駅にもそんな掲示がある。でも、そんな中でもいろいろな施策を打っている。

サイクルトレイン

自分が乗っていると、自転車と一緒に乗ってくる、老若男女さまざまな人がいて、最初ちょっととまどった。でも、これが上電スタイル。混雑していない時間帯は、自転車を折りたたんだり袋に入れたりせずに、一緒に電車に乗ることができる。

鉄道でも行けるところに自動車を使ってしまう最大の原因が「《駅まで/駅から》歩いて行くのが面倒」というところにある場合、これは有効な手段かもしれない。上電でも高校生やお年寄りが活用しているようだ。

スタンプラリー

大手私鉄でもイベントとして実施しているけれど、どれも駅にスタンプを設置するしくみなので、スタンプを設置した駅が一部だけならそこにしか行かないし、ともすると車や他の交通機関でその駅に行ってスタンプを押す、なんて人も出てきそうだ。

でも、上電のスタンプラリーは「乗らないと押せない」。なにしろ、全部で8編成ある電車内に設置されたスタンプを押さなければならないからだ。ハードルは高いけれど、鉄道が趣味の人には面白そうだ。3編成くらいは押せるかと思って、途中から中央前橋に折返し、食事をしてからもう一度駅に行ってみた。でも、中央前橋駅では残念ながら一度乗ってスタンプを押した編成にあたってしまい、スタンプは2個止まりとなってしまった。

「富士山下駅から富士山駅」=約5時間

2014年に、GoogleがこんなCMを打った。

www.youtube.com

もちろん、僕は富士山下駅富士山駅、それぞれの存在を知っていたので、これを見たときに大爆笑してしまったのだけど、冗談でなく、「本当に間違える」外国人観光客の方がいらっしゃるとのこと。上毛電気鉄道 沿線案内の富士山下駅の案内にも、近くに「富士山(ふじやま)」という山はあるが、「※日本一高い山梨県・静岡県の富士山(ふじさん)ではありません。誤乗車になりませんようにご注意ください。」と断り書きがある。

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富士山(ふじさん)の麓の生まれの者として「富士山(ふじやま)」にも登ってみたいものだ。実際、この日も僕の乗る電車にリュックサックで乗ってこられたお年寄りが居られた。

西桐生駅

上電の西のターミナルがこの西桐生駅だ。JR・わたらせ渓谷鉄道桐生駅とは徒歩で数分のところにある。

この西桐生駅は一目見て気に入ってしまった。

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終着駅に似つかわしいホームのたたずまいもそうだけど、時代が止まったかのような内装や外観もなんともいい。映画かドラマのワンシーンにでも登場しそうだ。

なんとなく、自分の小中学生のころを思い返すような、そんな雰囲気が上電にはありました。