天翔橋北斗の旅々失礼します

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秩父鉄道・PALEO EXPRESSと長瀞・秩父

SLと紅葉をたずねて秩父路へ:プロローグ

僕は乗り鉄なので、普段は「自分が乗れる車両」=「電車・気動車」に興味がある。だから、自宅からほど近いところに「武蔵野線」という貨物列車の大動脈が通っていても、機関車を撮りに行ったりなんてことはしない。

でも、SL、蒸気機関車は別だ。

SLは、既に実用的な鉄道車両としての座は他に明け渡しているけれど、各地で観光振興目的で走っている。そして、そんなのがあるなんて聞けば、行ってみたくなる。

今年は、毎年恒例になっている友人との「紅葉狩り」の行き先に、秩父鉄道長瀞を選んだ。ここにも、復活した蒸気機関車 C58 363号機が牽引するSL列車「パレオエクスプレス」が走っている。

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わくわくと、ワインと出会いと新そばと:熊谷駅→長瀞駅

熊谷駅・午前9時45分

同行してくれる知人と一緒にJR熊谷駅に着いた。さっそくすぐ脇の秩父鉄道熊谷駅に。祝日とあってたくさんの乗客が並んでいる。まず改札前で一日乗車券(¥1,440-・おとな)を購入、ついで改札内に入ってSL整理券(¥510-)を購入。事前にウェブで予約しておいたので、スムーズに発券してもらえた。前後では3枚・7枚と大量購入されている方もいた。

秩父鉄道熊谷駅は5番線・6番線を島式に配置した小さな構造。5番線にはお目当ての「SLパレオエクスプレス」(以下「パレオ」)が、後ろに電気機関車を備えた6両編成で入線してきた。

「整理券」は自由席で着席保障がないので、乗り込んだあとは座席争奪戦。ただ幸い、この日は熊谷からの乗車はさほど多くないようで、僕たちもしっかりと席を確保した。

「SL秩父ワイン列車」

SL列車はどこでもそうだが、いわゆる「観光列車」で、地元に観光客を集めるために運行している。たとえば群馬県内のJR線で運行しているSL列車には、群馬県ゆるキャラ「ぐんまちゃん」や沿線の方々が各駅で観光のアピールをしていたりする。

パレオも例外ではなく、それぞれの季節に合わせた企画がつく。この日は秩父産のワインの試飲と車内販売がある列車だった。同行者がワインの良し悪しがわかる方で、さっそく各ブランドの赤・白をそれぞれ試していた。僕も飲ませてもらったけれど、たまに自宅近くで購入するワインに比べると、すっきりとして飲みやすい感じがした。

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「誤」乗車のお客様・・・

と、そんなことをやっていると、泣きそうな女性の声。「羽生に行きたいのに、逆方向に乗ってしまった、どうしたらいいか」という話だったようだ。

実は、熊谷駅でパレオが入線する5番線は、本来は逆方向の羽生方面行きの列車が入ってくるホーム。しかもパレオと同じ時間帯に、逆向きの6番線にも(通常通り)普通電車の三峰口行きが止まっている。

「三峰口行きと反対方向に乗ればいいのだから・・・」と、パレオに乗ってしまったのだろう。この方は残念ながら最初の停車駅・武川駅で降り損ねてしまったようで、約30分後に停まる寄居駅まで乗ることになってしまったようだ・・・。

寄居から短い間の旅の友

寄居駅には10:51着。10分程度停車するので、この間に先頭のSLを撮りにいったりできる。だが、ここでトラブルが。「ドアが開かない」のだ。乗務員さんがばたばたと走り回り、何とかドア開。

同行の友人は写真を撮りに行ってしまったので、ひとりでボックスシートに座っていると、女性お二人連れの方が。一生懸命Selfie(自撮り)をされておられるので、「お撮りしましょうか?」と声をかける。写真を撮ってあげているところへ友人が戻ってきたので、4人で話し始める。

お二人はどうやらツアーの一環で寄居駅から長瀞駅まで乗車されるらしい。「紅葉はまだ早いですねえ」「今年は遅いみたいですよ」なんて話をする。

お二人のお住まいを訪ねたら、友人の職場が近いようで、彼とは地元話も弾んでいた。

長瀞駅にも定刻11:26着。さすがの観光地で、一気に人が降りた。

長瀞・岩畳にて

秩父は古代には海で、地質学的に注目すべき場所の宝庫だそうだ。ここ長瀞にも「埼玉県立自然の博物館」がある。パレオの名前の由来となった恐竜「パレオパラドキシア」の化石もこの秩父鉄道沿線から出土したものだ。

駅前にはその博物館のイベントと連動したのか、県のゆるキャラコバトン」が愛嬌を振りまいていた。せっかくなので一緒に記念撮影。その後「岩畳」へ。

風は冷たかったし、渇水期ということで川の流れも弱かったけど、山の木々はしっかりと色づき始めていた。

その後は「そば処はやし」さんで昼食。僕は山菜そばをチョイス。ちょうど新そばのシーズンだ。濃い風味の新そばを堪能、満足して再び秩父鉄道の客に。

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何度でもこだましている汽笛の音:長瀞駅三峰口駅

 そうなんです、SLだけは別なんです。

僕は1978年生まれなので、物心ついたときにはすでに蒸気機関車はなかった(地元の街を走る鉄道路線は、 馬車鉄道を電車に転換したものだったので、《昔は蒸気機関車が走っていたんだよ》なんて話もなかった)。だから、蒸気機関車を本で見たところで、ノスタルジックなものは 感じなかった。でも、小学生の時に父親に連れられ、大井川鐵道のSL列車に乗る体験をしたことで、すっかりその虜になってしまった。

まず、蒸 気機関車のいかにも「機械です」という無骨な姿、そして走り出す瞬間の動物にも似た「力の込め具合」がたまらない。すっと走り出し最高速に達する電車や ディーゼルカーは、それはそれでいいのだけど、蒸気機関車はそれとは対照的にゆっくりと走り出し、時としてまさに「あえぐように」坂を上っていく。その様子は後ろの客車内で感じていて も、外から見ていても、感情移入してしまう。

そして、蒸気機関車が出すありとあらゆる音が大好きだ。鉄道というものそのものが「音」の面で非常に豊かなものなのだけれど、特に蒸気機関車は、噴き出す蒸気、汽笛、そのほか機械の音がたくさんする。長い長い汽笛の咆哮なんて、何度聞いてもいい。

 秩父鉄道の終点、三峰口駅には転車台があって、きちんと方向転換をしてから熊谷行きとなって出発する。午前はパレオエクスプレスに乗り、三峰口に午後2時前にゆき、2時すぎのパレオエクスプレス・熊谷行きの発車シーンをとらえるのが僕のいつものパターン。

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今日もそうしたが、生き物のように走り出すSLには、自然と手を振りたくなった。

甦る囃子と花火とあの熱気:秩父まつり会館

秩父夜祭といえば全国的にも非常に有名な祭りだが、祭日が曜日にかかわらず必ず12月1~3日となっており、会社勤めをしていると見に行くのはちょいと厳しい。が、数年前にはたまたま休みにあたって見に行き、あの壮大で勇壮な祭りの雰囲気に圧倒されてしまった。

同行の友人にその雰囲気をちょっとでも知ってもらいたくて、「秩父まつり会館」へと案内した。人はまばらだったが、その分ひとつひとつの展示をしっかり見ることはできた。会館から徒歩で西武秩父駅へ。土産物屋が軒を連ねる仲見世通りでこんにゃくを食べていると、地元にお住まいの観光ボランティアの方が。かつて欧州を旅行されたそうで、同じ経験のある友人とはフランスの鉄道事情等で盛り上がっていた。また、お祭りと気候の関係など、ちょっと深い話も。

小雨が降り始め、一段と冷え込んだ秩父だったけれど、人との出会いのある小旅行になった。